映画とその原作

小説でも詩でもルポでも戯曲でもいいけど原作がある映画とその原作について無駄口をたたく

『メイド・イン・USA』(1967)

ホレス・マッコイ『明日に別れの口吻を』をアンナ・カリーナが滞在しているホテルのベッド上で読んでる。 後には別の人物、男が同じ本を読んでいるシーンが出てくるが、『悪党パーカー/死者の遺産』を原作としつつなんということか? なぜジェームス・キャ…

オーソン・ウェルズの オセロ(1952)

THE TRAGEDY OF OTHELLO: THE MOOR OF VENICE上映時間 94分製作国 モロッコ監督: オーソン・ウェルズ 製作: オーソン・ウェルズ 脚本: オーソン・ウェルズ 撮影: アンキーゼ・ブリッツィ G・R・アルド ジョージ・ファント 音楽: アンジェロ・フランチ…

『彌勒 MIROKU』(2013)

プロと学生が共同で映画を企画・製作していく“北白川派映画芸術運動”を展開する京都造形芸術大学・映画学科の学生と林海象が協力して完成させた映画。併映の『乙女の祈り』という『日々の泡』にオマージュしたような短編モノクロ映画と合わせると3部作を構成…

ゴールデンスランバー(2009)

キル夫(三浦くん)は原作にも登場する。濱田岳よりもっとスマートだが(だと思う)。定禅寺通りで首相凱旋パレードが行われてそこで暗殺されるというのは、原作と違う。教科書倉庫ビルは定禅寺通りではなく、東二番丁通り近くにある。旧電力ビルのナナメ向…

『ハイ-ライズ』J・G・バラード

ドクター・ロバート・ラング医師、教師、25階に住む。姉が同じマンションに住んでる。独身、離婚歴有り。中流階級代表。姉と女優のエリナ・パウエルの二人の女性の保護者然とした存在にラストは収まる。溺れ死した犬がプールに浮いていたときにその死骸を引…

『恐るべき子供たち』(1950)LES ENFANTS TERRIBLES

鏡は不吉さの契機。 「鏡が彼女の心を掻き乱した。エリザベートは眼を伏せて、薄気味の悪い手を洗った。」 このマクベス夫人のような冷徹な仕草は、もちろん映画でも表現される。 コクトーがオマージュした『ポールとヴィルジニー』は無辜な男女が世俗の汚れ…

『カラスの親指』(2012)

まず原作について、読書メーター 「カラスの親指」メイキング&インタビュー集 - YouTube 最初に競馬場でサンタマリアをだます詐欺、ここが原作と違う。 原作だと銀行での詐欺だ。 流れはほぼほぼ同じだが、ディテールが違っている。というか省いてしまって…

「プリンセス・トヨトミ」

万城目学原作 p389文春文庫 円の中央に浮かぶひょうたんの図柄を、竹中は驚きと懐かしさとともに迎えた。それは三十五年ぶりに見る風景だった」 はじめに大阪城が赤く染まる。 次に要所要所にひょうたんが置かれる。 p391 「長浜ビルにひょうたんを見たとき…

『組織』(1973)

原作者の脚本でよくできた例外の作品。まさにこれ。 原作だと組織のいろんな拠点に襲いかかるのが、パーカーの知り合いの犯罪者たちとなっている。映画はパーカーではなく、アール・マクリンと名を変えている。ウェストレイクが許さなかったからだ。ウェスト…

『のぼうの城』の2映画篇

秀吉はいろんな映画やドラマでいろんな役者が演っている。本作、市村正親でまず間違ってはいなかった。『テルマエ』みたいに風呂に入って尻を出しているのだが、それも混浴なのだが。一緒に湯に浸かる女は壇蜜がよかった、という後悔は否めない。のぼう=成…

007/カジノ・ロワイヤル(2006)

原作の発表が1953年だから、50年以上を隔てての(二度めの)映画化だ。 舞台も現在に置換えられて原作が書かれた頃にはなかった小道具が頻出する。 携帯電話とPCとかインターネットだ。 ボンドの愛車アストン・マーティンも最新式で登場するが、ヴェスパー…

「007/カジノ・ロワイヤル」原作篇

p109 創元社推理文庫 井上一夫訳 シュマンドフェールでもバカラでも、三度目の勝負というのが鉄壁の障害になるのだった。第一と第二の試練で勝つことはできても、三度目の勝負は大抵負けになる。 「カジノ・ロワイヤル」は二度映画化されている。 007は二度…

黒澤明式『どん底』(1957)

どん底(1957) メディア 映画 上映時間 137分 製作国 日本 初公開年月 1957/09/17 外国文学の翻案による映画化を黒澤は何作か手がけている。 その全てが見事に日本の土壌に移し替えられ、原作が外国のものと想像もつかないものさえある。 『どん底』はそのひ…

『黒い雨』井伏鱒二作

まだ読んでいる途中だが、おそろしく密度が濃い作品だ。ほんの数ページの中に原爆が落ちた広島の犠牲者たちの模様がつぎつぎに描かれていく。 これを映画化したのは今村昌平だったが、いまさらながら今村のバイタリティの強さに驚くばかりだ。 今村昌平の最…

インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア(1994)

レスタト。 名前をいつ告白するのかがポイントになる。 原作者が脚本を書いた本作だけに、アン・ライス自身がそれを十分に心得ていた。 だから映画では、ルイス(ブラッド・ピット)が「レスタト」と口走った時にサンディエゴというパリのヴァンパイアに狙わ…

『のぼうの城』その1

「長親は図抜けて背が高い。脂肪がのっているため横幅もあり身体つきは大きいが、容貌魁偉であるとか、剛強であるとかいった印象を一切ひとに与えなかった」 というのがのぼう様と呼ばれる主人公、成田長親の外見だ。このように小説には書かれているが、野村…

千年の愉楽のこと

こんなの書いていこうというのは、他でもない若松の死だ。 リスペクトし続けた映画人が不慮の死を遂げたのだ。 若松孝二は同郷のこころの師であった。 若松はどちらかというと原作のある映画作品は少ない。 思いつくのが北方謙三のハードボイルドを映画化し…