映画とその原作

小説でも詩でもルポでも戯曲でもいいけど原作がある映画とその原作について無駄口をたたく

凶悪(2013)

上映時間 128分

監督: 白石和彌
原作: 新潮45編集部 『凶悪―ある死刑囚の告白―』(新潮文庫刊)
脚本: 高橋泉 白石和彌
撮影: 今井孝博
美術: 今村力
衣裳: 小里幸子
編集: 加藤ひとみ
音楽: 安川午朗
出演: 山田孝之 ピエール瀧 リリー・フランキー 木村孝雄 池脇千鶴 白川和子 吉村実子
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話題作だったが、映画館で見逃していて、それでよかったと安堵した。正解。シナリオが酷すぎる。基本的な展開がほぼなっていないのだ。木村の無人の事務所の窓のほこりを山田が拭うと回想シーンになって室内で木村が首絞めやっているとか、最低だ。取材に苦労する山田が空見上げると薄曇りに枯れ木が枝を張っているという空にパンするカメラなんだが、思わせぶりしておいて何も起きないという不可解なシーンも多い。山田は主役だが、ドラマとしてはいなくても成り立つ。ただの狂言回しでよかった筈なのに、池脇という芸達者を女房にして認知症の母親がいて家庭的に問題があるみたいな余計な味付けをしてしまった。記者としての事件への関わり方が通り一遍にしか描かれない。取材のプロセスによって真実が見えてくるというような描かれ方がまるでないのだ。その点、CXでやってた「連続企業爆破テロ 40年目の真実」はジャーナリズムが特ダネを掴むまでの緊張感を見事に再現したドキュメントが鋭かった。記者が死体を埋めた現場に行って泥の穴掘するシーン、原作にはないが山田はなにも見つけることができない。骨片一つも。ピエール・リリーという日本人なのに外国人的な名前を持つへんてこな役者コンビが頑張っていい演技してても映画的には完全なる失敗作だった。