映画とその原作

小説でも詩でもルポでも戯曲でもいいけど原作がある映画とその原作について無駄口をたたく

『三十九夜』(1935)と『三十九階段』

THE 39 STEPS

上映時間 88分

製作国 イギリス

初公開年月 1936/03/

リバイバル →ヘラルド-96.5

監督: アルフレッド・ヒッチコック

原作: ジョン・バカン

脚本: チャールズ・ベネット アルマ・レヴィル イアン・ヘイ

撮影: バーナード・ノールズ

音楽: ルイス・レヴィ

出演: ロバート・ドーナット マデリーン・キャロル R・マンハイム ペギー・アシュクロフト マイルズ・メイルソン

 

ミスター・メモリージョン・バカンの原作にはいないキャラクター。

劇場から始まることもないから謎の女とハネイが出くわすこともないのだ。

つまり映画での脚色ということだ。

「三十九階段」という日本語の意味はあいまいでいくつかのことが連想される。

三十九番目の階段でもあるし、階段の三十九段目のことでも通じそうだ。

しかし三十九夜というのはありえないだろう。

日本語のタイトルのみが「夜」であって、映画の会話の中でもちゃんとstepと言っている。

実際のところ「三十九階段」とは、三十九段の階段のある港のことだ。

だが、ヒッチコックはスパイ組織の名前にすり替えている。

もはや階段ではないとばかり、日本語題は夜としたのかもしれない。

三十九夜、つまり一ヶ月以上の逃亡というニュアンス。

実際に逃げていた期間はそんなには長くはない。

その十分の一程度だ。

それからヒッチコックのもうひとつのすり替え。

ハネイの逃亡のきっかけとなった謎の女も原作では男である。逃亡の途中でハネイが出会い、助けの手を伸ばしてくれる人間たちの性別がことごとくすり替えられた。ヒッチコックにとって謎とは女そのものなのだ。