映画とその原作

小説でも詩でもルポでも戯曲でもいいけど原作がある映画とその原作について無駄口をたたく

『PARKER/パーカー』(2013)

ストーリーは原作『地獄の分け前』のプロットをかなり忠実に踏まえている。

クレアに父親(ニック・ノルティ)がいるところは違っているが、おかげでジェイソン・ステイサムがパーカーというよりも『エクスペンダブルズ』のクリスマスに見えてきた。ニック・ノルティがいるのは、パーカーの仕事仲間斡旋のためだ。原作では昔からの付き合いで信頼もある連絡係で別に家族的な関係ではない。

もうひとつ映画は『地獄の分け前』にプラスして『人狩り』『犯罪組織』といった初期パーカーのプロットも合成している。

ダンジンガーがボスのマフィアが今度の強盗チームと関係していたのだ。
はじめは一匹狼の集まりかと思っていたのが実はバックがあったというところだ。
このチームの次のターゲットであるパームビーチの宝石オークションの宝石の引取先に当てられている。原作には欠けているところだ。
一味のひとりで若造のハードウィックはダンジンガーの甥という設定。
原作と一番違うのは、パーカーが2度大怪我をするところだ。
一味が宝石強盗の話を向けた時にパーカーは拒否して処分しようと逃亡中の車の中で撃ちあいとなるわけだが、原作ではここは円満に別れる。
その後パーカーが小さい現金強盗を繰り返しながら名前を替えてパームビーチに乗り込む流れは一緒だ。無論そこにレスリーもいる。ジェニファー・ロペスが。
映画でも原作でもプロ中のプロと素人女が組むところがこのアクション劇の眼目である。

パーカーを付け狙う殺し屋は一味のリーダーであるメランダーが、ダンジンガーに雇ってもらうのだが、小説のはもっと謎めいていて偽パスポートを受け取るときに偶然居合わせて殺し合いになる麻薬王の手先だ。
原作では殺し屋の車にはねられ正体不明のけが人として病院にかつぎこまれる。
そこからレスリーが隠密に連れ出すところ、映画では描かれなかったのは残念だった。相当に緊張感あるシーンになっただろうに。

だから映画にはレスリーの妹は画面に出てこない。
そのかわり、大怪我のパーカーがレスリー家に逃げ込んだところにクレアがやってきて看護師としてパーカーの怪我の手当をする。

ラストのダンジンガーを仕留めにくるパーカーも、郵便で分け前を受け取るレスリーも、原作にはないところだ。

悪党パーカー