映画とその原作

小説でも詩でもルポでも戯曲でもいいけど原作がある映画とその原作について無駄口をたたく

ゴールデンスランバー(2009)

キル夫(三浦くん)は原作にも登場する。濱田岳よりもっとスマートだが(だと思う)。定禅寺通りで首相凱旋パレードが行われてそこで暗殺されるというのは、原作と違う。教科書倉庫ビルは定禅寺通りではなく、東二番丁通り近くにある。旧電力ビルのナナメ向かい側だ。伊坂は実際の仙台の通りにある実際の倉庫ビルを小説でとりあげた。爆発した森田のワーゲン(原作通りではないと思う)は、原作に従えば東二番丁と交差する広瀬通に止めてあったと思う。そこから裏通りに入って仙台駅の方向に逃げたんだと思う。映画は、森田のワーゲンがその車種、原作通りではないと思うが、後で本ひっくり返して確かめても良いが、どうでもいいか。とにかく定禅寺通りの裏側にワーゲンがあってそこから青柳の堺が逃げるのは原作と違う。また、原作でも連続通り魔殺人の犯人キル夫は確かに登場し、青柳を偶然に(?)助ける。プロデューサーの矢島の放送局は原作じゃ特定してないけど、映画はナマイキTVやってるKHBになってる。面白いね。原作だとキル夫事件捜索のために新型の監視装置が仙台市内いたるところに設置されている。仙台が1984年頃の近未来都市っぽく設定されている。そういう背景が前提にあって首相暗殺のオズワルド化にリアリティを与えたが、映画はそういう七面倒な設定をとっぱずしてしまった。ほかにも大分端折ってるところがあるが、例えば雅春が痴漢をする、してないのにしたと決めつけられる(これも罠、オズワルド化の前哨戦的に)こととか、だが一番大きのはここ、1084年化もっしくは未来世紀ブラジル化、だ。これがないと下水道からの逃亡作戦時に必要な大事な助っ人がひとり欠けるのだが、いいんだろうか。カローラのCMソングは、あんな歌ほんとにあったのだろうか。伊坂はどんな歌詞か教えてくれなかったが。仙台に腕の良い整形外科がいるのは本当だ。依田先生という。しかし、この原作の整形医のモデルということじゃなかろう。立ち小便してて警官にライトで照らされてつかまれる。だが、大外刈でころばして黄色の車の中に縛り上げる。児島さんだ。小島さんは雅春の見方になってくれる。原作にも小島さんはでてくるけど、それはマンションの一室で雅春を見張っている警官だ。そのマンションの部屋というは、宅配配達員だった雅春がよく荷物を届けていたところで、いつも長旅に出ていて留守にしている、でもって鍵の場所まで知っているという設定だ。雅春は一時ここに潜伏している。映画は、キル夫が案内するアパートの部屋をそんな設定に当てていた。ソニンがなつかしい。そういえば、映画じゃ雅春が宅配会社を辞めていることはいってなかった気がする。あ、でも報道の中に元宅配配達員とはいっていたんかも知れぬ。青柳が元同僚の岩崎英二郎を盾にして囲まれた警官隊から逃れるシーンがある。原作では八乙女駅前だったが、KHBのニュースはカモ団地にしていた。実は原作通りだと見通しが良すぎてたぶん逃げにくいと思う。伊坂は駅前からすぐに団地に入り込んで逃げると書いているが、たぶん実際の八乙女駅だと無理だ。だからカモ団地にした映画の方が正しい。

 

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