オーソン・ウェルズの オセロ(1952)
THE TRAGEDY OF OTHELLO: THE MOOR OF VENICE
上映時間 94分
製作国 モロッコ
監督: オーソン・ウェルズ
製作: オーソン・ウェルズ
脚本: オーソン・ウェルズ
撮影: アンキーゼ・ブリッツィ G・R・アルド ジョージ・ファント
音楽: アンジェロ・フランチェスコ・ラヴァニーノ
アルベルト・バルベリス
出演: オーソン・ウェルズ マイケル・マクラマー ロバート・クート シュザンヌ・クルーティエ
フェイ・コンプトン ドリス・ダウリング マイケル・ローレンス
p95
名声なんて、他人が押し付けてくる愚にもつかないまがい物だ、これといった業績がなくてももらえるし、身に覚えがなくても奪われる。
字幕だと「名誉」となっている。
映画は葬列からはじまる。黒く顔の塗ったオーソン・ウェルズのオセロの死に顔がアップで映るとカメラが引いて城塞の上をすすむ葬儀の列。運ばれる棺はやがてふたつになり、デズデモーナが横たわる。横に動く葬列に対して垂直に運動する檻が吊るされて登っていく。囚われたイヤゴーだ。こうして3者を運命を対象させながら物語ははじまる。
まずナレーションでオセロとデズデモーナのなれそめが紹介されて、オセロが公爵やデズデモーナの父ブラバンショーたちの前で自分の魔術について説明する場面だ。オーソン・ウェルズが弁舌をみせつける。魔術とはどうやってデズデモーナ心を奪ったかのいきさつだ。
キプロス島でトルコ軍をたたきのめすシーンは、荒ぶる海岸の描写で示される。遅れて到着したオセロはただちに勝利の無礼講を命じるのだ。
p121
こいつは緑色の目をした化け物です
p156
嫉妬というのは、ひとりで種をはらんでひとりで生まれる化け物です
映画は、ブラバンショーがオセロに対して不信を持っていること、イヤゴーがオセロに恨みを持っていることが原作以上に強調される。
キャシオーの軽薄に乗じて「名誉」をうばうところからイヤゴーの陰謀ははじまる。
街中がお祭り騒ぎにうかれるなかで酒に溺れた末の刃傷沙汰。オセロはキャシオーを罷免する。
イヤゴーはデズデモーナに相談しろとアドバイスする。一方でオセロにはキャシオーとデズデモーナの中が疑わしいと吹き込む。
用意周到である。
p221
これほど愛らしくこれほど致命的な女はいない。泣けてくる。
オセロは死ぬ。ナイフを自らの身体に突き刺し。
その前にデズデモーナの首を締めている。ベッドの上で。ベッドから転がり落ちたデズデモーナは今わの際にまで貞節を示す。
全てを知ったオセロは自らの運命をすべてつつみかくさず公表せよと遺言し、デズデモーナを抱えて倒れる。
オーソン・ウェルズの映像マジックもここで幕を閉じる。
松岡和子訳ちくま文庫